両手の不自由な障がい画家が口や足で描いた絵のグッズで、生きる勇気を!

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ネッタ ガノール――口で描く画家が紡ぐ「再生」と「祈り」の物語

エルサレムに生まれた少女、そして突然の転機

1979年、イスラエルのエルサレムに生まれたネッタ・ガノール(Netta Ganor)。
活発で好奇心旺盛な彼女は、日中は陸上競技に打ち込み、
夜はハンドクラフトに夢中になる、
いわゆる“スポーツも芸術も大好きな女の子”でした。

しかし15歳のある日、突然の激痛が背中を走り抜けます。
診断は「横断性脊髄炎」。
わずか数時間のうちに肩から下が麻痺し、
人工呼吸器を必要とする状態になりました。
学校にも戻れず、自由を奪われた日々――。
彼女にとって人生は、まるで色を失ったかのようでした。

 

“出会い”が導いた再生の一筆

長いリハビリ生活の中で、
ネッタは口と足で絵を描く障がいのある一人の女の子と出会います。
その姿に心を揺さぶられ、「私も描いてみよう」と筆を口にくわえた瞬間、
キャンバスの上に広がった色彩が、再び彼女の世界を照らし始めました。

水彩画から始まり、やがてアクリル画へ。
独学で描き続けた作品は、風景や花、人、動物――
どれも生命の輝きに満ちています。
「絵を描くことで、自分が再び“生きている”と感じられるようになった」
と彼女は語ります。

The Leaders Park

自宅近くの公園「リーダーズ・パーク」で撮影された3枚の写真をもとに構成された作品。
ヨガを楽しむ女性たち、息子と茶トラ猫の思い出の場面、そしてイスラエルの国鳥ヤツガシラをひとつの画面に重ね、公園で過ごす個人的な記憶と、現在のイスラエルという場所を象徴的に描いている。

 

画家としての歩み――MFPAとの出会い

2003年、ネッタは口と足で描く芸術家協会(MFPA)の奨学生になりました。
以来、作品は国際的な展覧会やグッズを通して世界中に届けられています。
2015年には準会員となり、活動の場をさらに広げました。

「もし障害がなければ、画家にはならなかったかもしれない」
――彼女はそう振り返ります。
創作は、苦難を越え、希望を描く行為そのもの。
手の代わりに口を使いながら、
彼女は“人としての強さ”をキャンバスに刻み続けています。

By the Water Lilies

 

京都への憧れ――遠く離れた日本との心のつながり

イスラエルで暮らすネッタの心を、ずっと惹きつけてきた国があります。
それが日本。
静けさ、調和、清潔さ、そして細部に宿る美――
彼女はそれを「心のやすらぎの象徴」と語ります。

そんな彼女の心を動かしたのは、
友人が京都を旅して撮影した写真でした。
円山公園、永観堂――秋色に染まる古都の風景。
その光と色彩に深く感動したネッタは、
2013年、アクリル画で『Autumn in Kyoto(三部作)』を制作します。

「この絵を描くことは、私にとって芸術を通して日本を旅することでした。
日本の美しさと穏やかな精神への愛を表現する方法だったのです。」

彼女が描く京都は、風景画でありながら“祈りのような絵”です。
静寂とバランス、季節のうつろいが、
見る人の心を包み込むように描かれています。

『Autumn in Kyoto(三部作)』をモチーフにした絵葉書

そして今、その祈りの色が、再び京都の地に戻ってきました。
『Autumn in Kyoto』のうち永観堂を描いた2作品が、
2025年秋より永観堂の境内で絵葉書として販売されることになったのです。

遠いイスラエルのアトリエから生まれた絵が、時を越え、季節を越え、
描かれたその場所にそっと還ってゆく――。
まるで京都の秋が、彼女に「おかえりなさい」と囁きかけているかのようです。

母となり、再び見つけた“命の意味”

2014年、ネッタは代理出産によって第一子を授かり、
その後もう一人の息子も生まれました。
彼女は自身を「手の代わりに心で抱く母」と表現します。
介助者たちが彼女の手となり、子どもたちの世話を支えますが、
母としての愛情は誰よりも近く、深いものでした。

「私は、子どもたちに“できる母”ではなく、
“感じる母”としてそばにいたい。
たとえ自分の手で抱けなくても、
彼らはいつも私の心の中にいます。」

戦時下のイスラエルで描かれた絵の一つに、
「カラフルなおもちゃの車で遊ぶ息子」があります。
背景はモノクロ。子どもの世界だけが、鮮やかな色を宿している。
暗闇の中にも希望の色を見いだす――彼女のアートそのものです。

The Colors of Childhood

 

そして今――「母性と障害」を描く未来へ

現在、ネッタは母として、そしてアーティストとして新たな挑戦を続けています。
「Motherhood and Disability(母性と障害)」をテーマにした作品制作を進め、
将来はこのテーマで個展を開くことを夢見ています。

「私はこれからも、母であり、画家であり続けたい。
息子たちが幸せで優しい人に育っていく姿を見守りながら。」

彼女の絵には、痛みや困難を超えた“生きる力”が宿っています。
それは、口に筆をとって描くアートでありながら、
誰よりも深く人間の強さと希望を語りかける、まさに生命の芸術です。

Blowing In The Wind


 ネッタ ガノール(Netta Ganor)プロフィール

1979年エルサレム生まれ
コンピューターサイエンスの博士号を持つ異色の画家
15歳で発症した横断性脊髄炎をきっかけに、マウスペインティングを始める
2003年より口と足で描く芸術家協会(MFPA)に所属
2013年「Autumn in Kyoto」三部作を制作
2014年、第一子となる男の子の母となり、今は二人の息子がいる
現在は「母性と障害」をテーマに創作活動を展開中
また、画家だけではなく、イスラエルのハイテク産業で情報システム分野のコンサルタントとしても働いている

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